顕微授精(卵細胞質内精子注入法)は1992年より25年間、ART(高度生殖補助医療)牽引してきました。
現在、多くの方が不妊治療にあたり体外受精や顕微授精を受けられています。
体外受精は採卵した卵子に適切な数の精子を振りかけて受精させる方法であるのに対し、精子の運動率や
数に問題がある場合や過去の体外受精で受精障害があった場合は顕微授精の適応になります。
顕微授精は細いガラス管(マイクロピペット)を使い、卵子の細胞質内に選別した良好な精子を一つ人工的に
挿入し受精させる方法です。
顕微授精のデメリットは細胞膜の弱い卵子はガラス管の挿入によりダメージを受けてしまい受精できない
場合があります。
そこで最近注目されているのは顕微授精ピエゾ法です。
先端がフラットなガラス管に微細な振動をかけることにより卵子の細胞膜に小さな穴を開けそこから精子を注入する方法です。
この方法は卵子への物理的なストレスを軽減し安定した受精成績が得られると考えられています。
今までの顕微授精では卵子の透明帯という膜に針を刺し押し切る形で精子を注入していたので物理的に
透明帯を穿刺することにより針の先端が卵子の細胞膜に押し込まれるような状態となり卵細胞膜を破壊してしまう原因になっていました。
顕微授精ピエゾ法は先端が平らなガラス管(マイクロピペット)を使い微細な機械的振動を起こすことで
透明帯に穴を開け卵細胞質を吸引せずに精子を送り込めるので卵細胞質内の損傷を防ぎ受精率を上げ変性率を
低下させる卵子に優しい顕微授精と云えます。
若い卵子は普通の顕微授精を行っても卵子自体の修復能力が高いので胚の分割などにさほど影響はないと思われますが40代の方の顕微授精にはより有効な手法であると思われます。
既に顕微授精ピエゾ法を取り入れている不妊クリニックもあり今後は顕微授精の主流になっていくでしょう。